← マガジン一覧に戻る 約6分で読めます

登山の「グレーディング」ってなに?体力度・技術度の読み方

登山の「グレーディング」ってなに?体力度・技術度の読み方

あなたは山を選ぶとき、何を基準にしていますか?「景色がきれいそうだから」「友達に誘われたから」——そんな理由で選んだ山が、実は自分の実力をはるかに超えていた。これは初心者に限らず、登山経験者にも起きる話です。実は、日本には登山ルートの難しさを数値で客観的に示す「山のグレーディング」という仕組みがあります。この記事では、グレーディングの読み方と活用法をわかりやすく解説します。知っておくだけで、山選びの精度がぐっと上がるはずです。

「山のグレーディング」とは——2つの軸で山を測る

山のグレーディングとは、各都道府県が登山ルートごとの難易度を統一基準で評価・公開している制度です。2014年に長野県が「信州 山のグレーディング」として全国に先駆けて公表し、その後、山梨・静岡・新潟・岐阜・群馬・栃木・山形・秋田・富山など全国に広がりました。

グレーディングは「体力度」と「技術的難易度」の2つの軸で構成されています。これが最大のポイントです。体力があっても技術が足りなければ危険ですし、技術があっても体力が不足すれば行動不能に陥ります。この2つを分けて評価することで、「自分に何が足りないのか」が見えてくるのです。

ここでひとつ、初心者が陥りがちな誤解を正しておきます。「コースタイムが短い山=簡単な山」と思っていませんか?実はコースタイムが短くても、鎖場や岩稜帯が続くルートは技術的難易度が高く設定されています。時間の短さと難しさはイコールではありません。グレーディングを見れば、この落とし穴を避けられます。

体力度の読み方——「ルート定数」という科学的な計算式

体力度は1〜10の10段階で表され、数字が大きいほど体力を要します。この数値は「なんとなく」ではなく、鹿屋体育大学の山本正嘉教授の研究に基づく「ルート定数」という計算式から算出されています。

ルート定数の計算式は次のとおりです。

ルート定数 = コースタイム(時間)× 1.8 + ルート全長(km)× 0.3 + 累積登り標高差(km)× 10.0 + 累積下り標高差(km)× 0.6

たとえば、体力度 3 程度なら日帰りで無理なく歩ける範囲、5〜6 になると長い行動時間や大きな標高差を伴い、8以上 は1泊2日〜2泊3日以上が想定されるタフなルートです。

注目してほしいのは、「累積登り標高差」の係数が 10.0 と飛び抜けて大きいことです。つまり、登りの標高差がルートのきつさを最も左右するということ。「距離は短いけど急登が続く山」は、見た目以上に体力度が高くなります。これを知っているだけで、計画段階での判断力が変わってきます。

※ 体力度はあくまで標準的な条件下での目安です。天候、積雪、個人の体調などによって実際の負荷は大きく異なります。

技術的難易度の読み方——A〜Eの5段階

技術的難易度はA〜Eの5段階で評価されます。ルート中で最も難しい箇所の技術レベルが、そのルート全体のグレードとして採用されます。

具体例を挙げると、高尾山の表参道は体力度2・技術A。富士山の富士宮ルートは体力度5・技術B。そして北アルプスの槍ヶ岳〜穂高岳間の縦走路になると体力度10・技術Eと、文字どおりの最高難度です。

大切なのは、「AやBだから油断していい」という意味ではないことです。グレーディングは無雪期・好天時を前提に評価されています。悪天候や残雪があれば、Aランクの山でも危険度は跳ね上がります。あくまで「条件が良いときの基準値」として捉えてください。

グレーディングの活用法——「背伸びしすぎない山選び」のために

グレーディングを最も効果的に使う方法は、自分の「現在地」を知ることです。

まずは体力度2〜3・技術Aのルートから始めて、無理なく歩けるかどうかを確認します。余裕があれば次は体力度4・技術Bへ。このようにステップを踏むことで、「いきなり難しい山に挑戦して怖い思いをした」「途中で体力が尽きて動けなくなった」というリスクを減らせます。

経験者と一緒に登るときも、グレーディングは共通言語になります。「体力度はどのくらいまで経験がある?」「技術Cのルートは初めて?」といった会話ができれば、パーティー内の認識のズレを防げます。

各県のグレーディング表は、県の公式ホームページからPDF形式で無料公開されています。長野県・山梨県・静岡県などが特に充実しているので、計画を立てる際にはぜひ確認してみてください。詳細は各都道府県の最新情報をご確認ください。

まとめ

山のグレーディングは、「体力度(1〜10)」と「技術的難易度(A〜E)」の2軸で登山ルートの難しさを客観的に示す仕組みです。体力度はルート定数という科学的な計算式に基づいており、特に累積登り標高差が大きな影響を持ちます。技術的難易度はルート中の最も難しい箇所で決まり、道の整備状況や岩場の有無などが評価されます。

ただし、グレーディングは好天・無雪期が前提の「基準値」です。実際の登山では天候や体調など変動要素が必ず加わることを忘れないでください。グレーディング表を活用しながら、少しずつステップアップしていく。それが、安全で長く楽しめる登山への一番の近道です。

YAMATOMOで山の仲間を見つけよう

山チャット、コミュニティ、ガイド依頼など、山を楽しむための機能が充実。

App Storeでダウンロード