「来月、北アルプスに行くんだ」——そう決めたあと、出発までの数週間、あなたは何をしていますか? ザックを準備するだけ、というのではちょっともったいない。実は出発前の3週間の使い方で、夏山の体験は大きく変わります。装備のメンテナンス、足慣らし、計画の精緻化——ひとつひとつは小さな作業ですが、現地で「やっておけばよかった」が一つも出ないと、登山は何倍も楽しくなります。この記事では3週間前から当日朝までの準備チェックリストをお届けします。
夏山は「3週間前から」始まっている
夏山シーズンの本番は7〜8月ですが、ベテランほど6月のうちから動き始めます。理由はシンプルで、当日に「あれ忘れた」「これ動かない」を発見しても手遅れだからです。
3週間という期間は、装備の修理・買い替え・体力作り・情報収集を余裕を持ってこなせる、現実的な準備期間です。これを逆算して、週単位でやることを並べていきましょう。
Week 3前——装備の総点検
出発の3週間前にやるのが、装備の棚卸しと機能確認です。
登山靴のチェック
- ソールの剥がれ・摩耗・ヒビをチェック
- 靴紐の擦り切れがないか
- シューレースのフックやハトメの破損がないか
- 1年以上使っていない靴は、専門店で点検を
登山靴のソール剥がれは、何年も使っていなくても経年劣化で起きます。出発当日に発見しても遅いので、必ず早めに確認してください。靴底だけ張り替えてくれる修理サービスもあります。
レインウェアの撥水テスト
レインウェアは使っていなくても撥水性が劣化します。シャワーをかけて水を弾くか確認し、弾かなくなっていたら撥水剤での再処理(DWR)をしましょう。完全に膜が劣化している場合は買い替えも検討。
電池・電子機器類
- ヘッドランプの点灯確認、予備電池の用意
- GPSアプリの地図ダウンロード(オフライン対応)
- モバイルバッテリーの容量確認
Week 2前——体力と高所順応の準備
2週間前は、装備よりも「体」の準備に重点を移します。
足慣らしの登山を1〜2回入れる
本番3週間〜2週間前のあいだに、近郊の低山で4〜6時間の足慣らし登山を1〜2回入れると効果的です。実際に山を歩く以上に良い準備はありません。本番想定のザック重量に近づけて担ぐとさらに有効です。
日常での体力作り
- 週2〜3回の30分ウォーキングまたは階段昇降
- スクワットや踏み台昇降など、下半身の筋力強化
- 心肺機能のためのジョギングやサイクリング
高所順応への準備
標高3,000m級の山に行く場合、可能であれば本番の1〜2週間前に標高2,000m前後の山を経験しておくと、体の高所適応が早くなる傾向があります。富士山や北岳など標高の高い目標を持つ場合は、山小屋泊で1日標高に体を慣らしてから山頂を目指す計画にするのも有効です。
Week 1前——計画と情報の最終確認
1週間前は、現地情報と計画の最終調整に集中します。
山域・小屋の最新情報
- 山小屋・テント場の予約再確認
- 登山口へのアクセス(マイカー規制・バス時刻表)
- 登山道の状況(崩落・通行止め情報)
- クマ目撃情報・水場の状況
天気予報と判断軸
1週間前から週間予報をチェックし、本番3日前くらいから時間別予報を見て、計画変更の必要性を判断します。日程を1日ずらせる柔軟性があるなら、好天日にぶつけられる選択肢が広がります。
登山届の準備
コンパス・YAMAP・登山ポストなど、提出方法を確認しておきましょう。家族や友人にも、ルートと下山予定時刻を共有しておくと安心です。
前日・当日——忘れがちな最終チェック
出発前日と当日朝は、慌ただしくなりがちです。次のチェックリストを使って、忘れ物を防ぎましょう。
前日まで
- ザックパッキング(重いものは中央上部・背中側に)
- 水分・行動食の準備
- 現地の最新天気予報のチェック
- 登山届の提出(電子申請の場合は前日推奨)
- 早めの就寝(前夜の睡眠不足は高山病リスクを上げる)
当日朝
- 朝食はしっかり(消化に良いものを)
- ヘッドランプ・予備電池・モバイルバッテリーの最終確認
- 雨具・防寒着の場所をすぐ取り出せる位置に
- 車のキー・財布・運転免許証など下山後に必要なものを車内/家に確認
※ 持病のある方、薬を常用している方は、医師と相談のうえで持参薬や対応策を確認してください。緊急連絡先(家族・職場)と保険情報も携帯しておくと安心です。
まとめ
夏山の楽しさは、当日の体験だけでなく、その「準備期間」の中にも詰まっています。3週間前に装備、2週間前に体力、1週間前に情報、前日と当日に最終チェック——この大まかな流れを守るだけで、当日のトラブルは劇的に減ります。
計画立案や情報共有は、仲間と一緒にやると楽しさが倍増します。装備チェックの様子を共有したり、足慣らしの低山に一緒に行ったり——準備期間そのものがすでに山行の一部です。当日に「全部やってきた」という安心感を持って出発できれば、夏山は最高の一週間になります。