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高山病とは?症状・予防・対処法を正しく知る

標高の高い稜線を歩く登山者

あなたは「高山病」と聞いて、ヒマラヤや南米の高地だけの話だと思っていませんか? 実は、日本国内の登山でも高山病は起こります。富士山はもちろん、北アルプスの稜線歩きでも頭痛やめまいに襲われる登山者は少なくありません。高山病は「体力がない人がなるもの」という誤解も根強いのですが、体力や経験に関係なく、誰にでも発症する可能性があります。この記事では、高山病のメカニズムから具体的な予防策、そして山の上で症状が出たときの正しい対処法までをお伝えします。

そもそも高山病はなぜ起きるのか

高山病は、正確には「病気」ではなく、低酸素環境に体が順応しきれないときに現れる一連の症状の総称です。標高が上がると気圧が下がり、空気中の酸素の割合は同じでも、体に取り込める酸素の量が減ります。平地の気圧がおよそ1013hPaであるのに対し、標高3,000mでは約700hPaまで下がり、体が利用できる酸素量はおよそ7割程度になります(条件によって異なります)。

この酸素不足に対して体は呼吸を速くしたり、心拍数を上げたりして適応しようとしますが、急に標高を上げるとこの「順応」が追いつかなくなります。これが高山病の本質です。

ここでよくある誤解を一つ。「若くて体力がある人ほど高山病になりにくい」と思われがちですが、これは正しくありません。高山病のなりやすさは体力よりも個人の体質や、その日の体調、そして登るペースに大きく左右されます。むしろ体力に自信があるほどハイペースで標高を稼いでしまい、結果的に高山病を発症するケースもあるのです。

高山病の症状——「ただの疲れ」と見分けるポイント

高山病の症状は大きく分けて3つの段階があります。

軽症:急性高山病(AMS)

一般的に標高2,500m前後から発症リスクが高まるとされており、高所に到達してから6〜12時間後に症状が出ることが多いです。主な症状は次のとおりです。

「ただの疲れ」と間違えやすいのですが、見分けるポイントは頭痛をともなうかどうかです。登山の疲労だけなら休めば楽になりますが、高山病による頭痛は標高を下げない限り改善しにくいという特徴があります。

重症:高地肺水腫(HAPE)・高地脳浮腫(HACE)

軽症を放置したり、無理に標高を上げたりすると、命に関わる重篤な状態に進行する可能性があります。

これらの症状が出たら一刻も早く標高を下げる必要があります。自力での下山が困難な場合は、すぐに救助を要請してください。

※ 高山病の症状には個人差が大きく、上記はあくまで一般的な目安です。少しでも異変を感じたら、医師・専門家の判断に従ってください。

高山病を防ぐための実践的な予防策

高山病は「かかってから治す」よりも「かからないように備える」ことが圧倒的に重要です。以下の対策は、Wilderness Medical Society(WMS)の臨床ガイドラインなどでも推奨されている方法です。

① ゆっくり登る——これが最大の予防策

高山病予防の核心は登高速度のコントロールです。標高2,500mを超えたら、「宿泊する高度」を1日あたり500m以上は上げないことが推奨されています。たとえば富士山の場合、五合目(標高約2,300m)に到着したら1〜2時間は体を慣らしてから登り始めるだけでも、発症リスクをかなり下げることができます。

「あの人はもう先に行っている」と焦る気持ちはわかりますが、高山病に関しては速く登ることに何のメリットもありません。

② 水分をこまめに摂る

高所では呼吸が速くなり、乾燥した空気の中で体の水分が失われやすくなります。脱水は高山病のリスクを高めることがわかっているため、のどが渇く前にこまめな水分補給を心がけましょう。目安は通常の登山時よりも意識的に多め(条件によって異なりますが、一般的に1日2〜3リットル程度が目安とされています)。

③ 前日の睡眠と体調管理

登山前夜の寝不足や飲酒は、高山病の発症リスクを高める要因とされています。標高の高い山に挑む前日は、しっかり休養を取ることが大切です。「登山は前日から始まっている」と考えてください。

④ 深い呼吸を意識する

標高が高い場所では、意識的に深くゆっくりとした呼吸を繰り返すことで、酸素の取り込み量を増やすことができます。歩きながら「吐く息を長く」を意識するだけでも効果があるとされています。

※ 薬(アセタゾラミドなど)による予防法もありますが、処方箋が必要な医薬品です。使用を検討する場合は、必ず事前に医師に相談してください。

山で症状が出たらどうする?——3つの鉄則

どれだけ対策しても、高山病を100%防ぐことはできません。大切なのは、症状が出たときに正しく対処できるかどうかです。

鉄則1:それ以上、標高を上げない 頭痛やめまいなど高山病の兆候を感じたら、まずその場で立ち止まり、絶対に標高を上げないでください。「もう少しで山頂だから」という気持ちが最も危険です。

鉄則2:症状が改善しなければ、下山する 同じ標高で休んでも症状が回復しない場合は、下山が最善の治療です。一般的に300〜1,000m程度標高を下げると症状が改善するとされています。

鉄則3:仲間に伝える、一人で判断しない 高山病は判断力そのものを低下させることがあります。「大丈夫」と自分では思っていても、周囲から見るとふらついているということも。体調の変化は早めに同行者に伝え、一人で無理な判断をしないことが命を守る行動につながります。

ここで注意してほしいのが頭痛薬の使い方です。市販の頭痛薬で痛みは一時的に抑えられますが、高山病そのものを治すわけではありません。頭痛薬を飲んで症状を隠したまま標高を上げると、後になって急激に悪化するリスクがあります。薬はあくまで応急的な手段であり、根本的な対処は「標高を下げること」だと覚えておいてください。

※ 応急処置や薬の使用については、医師・専門家の判断に従ってください。

まとめ

高山病は体力や経験に関係なく、標高の高い場所に行けば誰でも発症する可能性がある症状です。最も大切なのは、ゆっくり登って体を順応させること、そして症状が出たら無理をせず標高を下げる勇気を持つこと。「高山病の兆候を知っている」「正しい対処法を知っている」という知識が、あなた自身だけでなく、一緒に登る仲間の安全にもつながります。

山の上で体調が変わったとき、信頼できる情報や経験者のアドバイスがあるかどうかで行動は大きく変わります。事前に山域の最新情報を集め、余裕のある計画を立てて、安全な登山を楽しんでください。

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